【条件不利地でどう生き残るか】
私の地域は山間部の谷津田で、田んぼの形が歪で平野部に比べ田んぼが小さい、そういった地域で農業をしています。この地域の農業者の平均年齢は70歳前後、そのためこの先自分がどう生き残るか長年考えてきました。そしてある時気がつきました。作業能率の悪い山間部は、平野部と同じ資材・手法を取ると経費は同じであるため、結果として当然衰退すると。ここで生き残る方法を模索する日々。
【既成概念を破る気づき】
そこから色んな農業者の話を聞いたり、70歳以上の農業者に昔の農業について聞いたりし、その中で気づきがありました。ほんの60年ぐらい前にはほとんど化成肥料は無く、広く普及したのはそれ以降で、昔は山間部は落ち葉を使っていたようです。近くの山の竹を農業利用できれば、山間部農業の強みに変わるのでは?と考えてました。その後土壌改良として、落ち葉の代わりに竹をチップ化して使ってた期間もありましたが、現在は十分地力があるという事で、竹チップを投入する必要が無くなった圃場は自然栽培に移行しています。
【オーガニック栽培への挑戦】
この中山間地域で生き残るには、オーガニック栽培の技術が必須と考えました。しかし、れんこん農家の常識では不可能と思われており、その研究をしたいと思っていました。また、れんこん業界の国内トップレベルの生産者達は、微生物や微量要素(ミネラルなど)に着目して食味を上げ、そのようなれんこんは高値で取引されています。そのため、より微生物を生かす事ができれば食味のUPが期待できるのではと考えました。
【新しい栽培手法の確立】
研究の結果、今までの施肥によるやり方の対極として、微生物を主体とした栽培方法で国内トップレベルに並ぶ糖度9(通常7)で高食味を実現しました。驚くことに、れんこんにおいては全国で10軒前後しかオーガニック栽培のれんこん農家は無く、それほど病害虫をクリアするのが難しい作物です。おそらく、まだ微生物と植物の生態が研究されつくしてない領域があるのだと思います。
植物と微生物間の養分供給を施肥による栽培でする、新技術が20世紀以降誕生しましたが、過剰施肥・不足などまだ研究が足りない部分があると感じています。①施肥体系の栽培と②微生物体系の栽培ルートの2つがあるのだろうなと。